投資家対談(鎌倉投信・新井様)

インタビュー

鎌倉投信が運用する公募の投資信託「結い2101」の投資先に、この度株式会社ホープが加わることとなりました。
「22世紀の社会を豊かにするために、本当に必要とされる会社を応援したい」。金融商品としては異色ともいえる理想を掲げ、かつそれを実現している「結い2101」。

その運用責任者であり、多くの会社を観てこられた鎌倉投信取締役・資産運用部長である新井和宏さんに、ホープの印象や期待することについてお聞きしました。

 

時津: 鎌倉投信さんは「結い2101」の投資に「いい会社」という表現を使われていますよね。
数字が重視される金融の世界では珍しい言葉だと思うのですが、どういった意図でこのような価値基準での運用をされているのですか?

新井:まず最初にお伝えしたいのは、会社は「お金を生み出す」ためにあるわけではないということです。

会社が行う事業を通じて世の中をどうしたいのか、というのが最初にあり、それを続けるために「利益」が必要になるのが本来の形です。「利益」は会社が持続するために大事な指標ではありますが全ての会社がそれを一番の目標にすると、社会は成り立たなくなってしまいます。同じように、「投資」も本来はお金儲けの手段ではなく、「いい会社」が発展するために、資金面で支援するものです。

ですから、私たちは投資先を「いい会社」=「これからの社会をよりよくする会社」という基準で選び、長く応援していく仕組みを作ることに挑戦しています。当初はなかなか理解を得られませんでしたが、今ではお陰様で純資産総額も300億円を超え、順調に運用できています。

時津:投資先の「いい会社」は、具体的にはどのように選ばれているのですか?

新井:必ず現場を見て、そこで働く人を見るようにしています。

会社を作っているのは人ですから、その人たちが何を生み出すか、ということが最も重要です。会社に対して投資を検討するとき、最初はその会社の業績の数字はほとんど見ないんですよ。業績は、基本的には「今まで」の結果です。投資に重要なのは「未来」なので、すでに生まれているものを見ても仕方がないんです。

そして、現場に行って一番大事に見るのは、「雰囲気」です。特にコミュニケーションですね。上司や部下がどんな表情で、どんな会話をしているのか。ホープさんに伺ったときも社内見学をしながら担当の方がいろいろ説明してくださったのですが、ほとんど聞かずに社員の皆さんのやり取りばかり見ていました(笑)。

どんな企業でも、コミュニケーションが悪化することで、会社全体のロスが生まれてきます。そして、それはすべて「雰囲気」に織り込まれます。実際に観察すれば自然と見てとれますし、逆に、現場に行かなければ決してわからないことです。

他に見る点としては、「当たり前の基準」、すなわちある種の「美意識」があります。例えば本が揃っているのか乱れているのか。乱れていれば心が乱れているんだなと。自分の基準が外に向いているか、内に向いているかです。

「当たり前」が外向きの人は、「本を並べる」ということについても「お客さんが見たら恥ずかしいかな」と、リーダーシップを持って考え行動します。内側に向いている人は、「自分の時間を使って給料を貰っているので業務以外のことはしなくていい」と考える。そうして段々やらされてる感が出てきて、悪い空気が周囲に広がっていってしまう。どの組織にも通常外向き・内向き両方の人がいますが、どちらがより多いのか、会社全体の基準がどの程度の高さにあるのかが大事です。

会社は業務をこなすだけでなく、「人間力」を成長させる場所でなければいけないと思っています。人との対話力や人を惹きつける力、礼儀礼節などですね。その根底にあるのは「相手に対する感謝」で、感謝がなくなると「自分はこんなに頑張っているのに見てくれない」と他責になっていきます。

「人間力」を鍛えることは「この人ともっと仕事がしたい」に直結しますから、結果的にその人の活躍の場が増えていって、会社そのものの成長に繋がります。「人間力」を育てる場所であるというのは伸びる組織の条件でもあり、「いい会社」はほとんどどこも、これがぶれていません。

時津:弊社にはどこから、どのタイミングで興味を持っていただけたのでしょうか?

新井:時津さんにお会いするまでの経緯は証券会社さんや、共通の知り合いの方を通じてですね。

お会いする前に、もちろん事業内容は確認させていただきました。「結い2101」では「人:人財を活かせる企業」「共生:循環型社会を創る企業」「匠:日本の匠な技術・優れた企業文化を持ち、また感動的なサービスを提供する企業」という3つのテーマを設けており、その中のどれかに当てはまることを「いい会社」の条件の一つにしています。

ホープさんの「自治体の財源確保」という事業が、「共生」に該当するなとまず思いました。そうして時津さんにお会いしてみて、第一印象で「真面目な人だなあ」と(笑)。最近の若い経営者はユニークな方が多い中、見るからに古風で規律を重んじる方。その後社内見学にも伺いましたが、「『古風』についてくる若い社員」というのはどうなんだろう、というのは気にしましたね。

時津:実際に見ていただいた印象はどうでしたか?

新井:やっぱり「若い」、それから「エネルギーがある」「フラット」でした。みなさん活き活きした目をしていて、年齢差が少ないこともありすごく風通しがいい。コミュニケーションが大事、といいましたが、その点では健康的な状態だと感じました。

そして、「鍛え甲斐があるな」と。若さゆえの不足点も多いですが、投資に重要な「可能性」という部分は大きいと思いました。

時津:期待をかけていただいたのは、そういった若さや可能性の部分でしょうか。

新井:そうですね。それも大きいです。そして、やはり「財源確保」というテーマですね。

私は今、「自治体に本当の自治がない」ことが問題だと思っています。最たるところは福島や沖縄です。原発や米軍基地があることで、とても悲しいことが起こっている。なぜかというと、財源を外に頼るしかなく、政府の言いなりになるしかなかったからです。

それを解決する「自己財源」というところに切り込めるホープさんの事業や、そこに自分たちの成長を重ねようとする姿勢に共感しました。ぜひ、幸せな自治体を増やしていってほしいと思います。いずれ、「ホープがあるから今のこの自治体がある」、と言われたら嬉しいですよね。

時津:これは半分私の興味の質問になるのですが、株式を売る基準はあるのでしょうか?例えば弊社は今時価総額が20億いかないくらいですが、ここから業績回復ができたときに、どのタイミングで売る、というのはありますか。

新井:基本的には業績や株価の変動で大きな売り買いをするということはないです。

「結い2101」では基本的に「1社あたりの投資上限は、『結い2101』の純資産総額の1.2%=約4億円(※2018年1月現在)」といった運用方針を定めているので、それを超えないうちは売りませんので、安心してください(笑)。逆にどうしても必要という場合には4億円くらいまでは投資できます。

時津:今後のホープの課題になる部分や、成長に必要なこととはなんだと思われますか?

新井:「人財育成」に尽きます。先ほども「若い」と話しましたが、今、未完成ですがエネルギーに溢れていて、いわば宝の山なわけです。これを活性化させて、育てられたときにどれだけ輝くか。投資をかけていくのに、一番伸び率の良い部分だと思っています。

人財育成については、今後私も直接関わらせていただく予定です。社員の皆さんから率直なお話を伺ったり、外部からの刺激を提供していければと思っています。

また、コミュニケーションについて、良好ではありますが、今は社長主導のところが大きいです。これからホープがぶれずに成長していくには、社長のDNAを受け継ぐ人を増やして、社長と同じ志を語れる社員をどれだけ増やせるかが重要になってきます。

特に、部長陣等、中間管理職の成長ですね。今は社長主導で回っているので焦る必要はありませんが、伝わらなくなった時のために、どういう中間層を育成するのか、そのために「今」どう手を打つのかが大事です。

時津:最後に、弊社の社員に対してメッセージを頂けますか。

新井:日本は多くの社会課題を抱えていて、夢や希望を持てない若い人がたくさんいます。自治体が本当に元気になって、地域が活性化するところをその人たちに見せてほしい。そうすることで、社名の通り「希望」になることができるのだと思います。

私たちはそれに期待して投資をしていますので、是非ともそこを実現していただきたいです。

鎌倉投信株式会社
取締役 資産運用部長 新井 和宏

1968年生まれ、東京理科大学工学部卒業。住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)勤務を経て、2008年に同志4人で鎌倉投信を創業。「結い2101」運用責任者として活躍中。著書に『持続可能な資本主義』『投資は「きれいごと」で成功する』など